学術論文『医学と薬学』Vol.80 に掲載されましたのでご報告します。
緒言
国民生活基礎調査によると,健康に関する自覚症状のなかでも「腰痛」「肩こり」は男女共にもっとも多い訴えとなっている1)。慢性化しやすい腰痛や肩こりは,日常生活動作の妨げや
生活の質の低下をもたらすと指摘されている2)。腰痛や肩こりに対しては,さまざまな対処策が提案されており,整体やマッサージ,医薬品や湿布,コルセットや温泉療法,腰痛軽減クッ
ションなども浸透している。テーピングは肩こりや腰痛の対策のひとつとして,痛み軽減や重症予防などに利用されている。
テーピングとは,怪我の発生および悪化予防や動作性向上のため,対象部位にテープを巻き,体位固定や動作補正を行うものである。近年では,負傷の有無にかかわらず,テーピングによつ身体の関節や筋肉サポートを通じて,疲労軽減,安定性向上,可動域の拡大,パフォーマンス向上等が期待されている。安全で効率的な身体活動のサポート用途も増えており,テーピングはアスリートから医療現場や介護現場などの身体活動をともなう場面で取り入れられている。このテーピングを応用した身体サポートのアイテムやスポーツウェアについても研究が進んでいる3)。衣服にテーピング機能を付与したコンディショニングウェアやコンプレッションウェアは矯正圧着ともよばれ,身体にフィットして着圧をかける設計により,筋肉や関節に適度に加圧し,姿勢の補正やむくみ予防,動きのサポートを図る製品として,展開されている。一方で加圧そのものが違和感やストレスとなるケースも多く,着用時間やシーンが限定的になってしまうことが課題であった。
そうしたテーピングの利点と課題を踏まえ,われわれは普段から着用する衣服にこうした機能を付与することで,負担なく継続的な使用ができる製品開発に取り組んだ。「間接テーピングⓇ」の技術により,身体にタイトにフィットするのではなく,通常の衣類と同様のゆとりある着心地を実現した「リライブシャツ」「リライブパンツ」が誕生した。このシャツとパンツにはテーピングの代わりとなるプリントやリライブテープなどのリライブ加工を中医学の経絡に即して配置した。リライブ加工したシャツやパンツを着用することで,筋肉は継続的に活性化されることとなり,利用者からは身体機能や運動能力に変化が生じたという実感が寄せられている。こうした利用者の着用の実感を客観的な影響として評価することは,適切な利用促進のために重要と考えられた。そこでわれわれは「リライブシャツ・パンツ」着用による関節可動域や筋硬度の変化,柔軟性向上や握力・背筋力などの筋力向上,血流改善や疲労度軽減などを評価する研究を実施した。
Ⅰ.研究目的
本試験は「リライブシャツ・パンツ」の着用が体組成へ与える影響を検証することを目的とした。